北陸徘徊人(元)

富山、福井、石川を中心にゆるーい旅を満喫中

名鉄小牧線・上飯田駅周辺徘徊

前日までの天気予報では確か「曇り」だったはずなのに、

目覚めて外を眺めたらしとしと雨が降っていた。

うーむ、今日はフリーきっぷ買ってうろうろするつもりで、

食堂や沿線の銭湯をピックアップしていたのに、、、

 

まあ、行けばいいのであるが、

何となく気が乗らず、

かといって雨はそのうちやんだけど、

薄暗い空は再び泣き出しそうな気配で、

だらだら過ごしていると気づけば昼近くになり、

小腹が減って「イトメンのチャンポンめん」を食べたら、

いつしか青空が広がっていた。

「・・・」

ま、いっか、電車に乗って銭湯だけでも入ってこよう。

 

 

 

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名鉄小牧線の電車は上飯田駅に着いた。

上飯田には銭湯とあわせて幾つか訪ねてみたい場所がある。

そのひとつがかつての上飯田駅

 

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今でこそ名鉄小牧線の電車はそのまま地下鉄に乗り入れて平安通駅まで直通しているが、

平成15年まではこの駅で線路が途切れていた。

そのため多くの通勤客が平安通まで歩いていた、といった記事を

鉄道ジャーナルか何かで読んで、

実際に訪ねてみたことがあった。

 

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昔から大阪の汐見橋とか片町といった、

終着駅独特の雰囲気が好きだったもので、

ここ、上飯田でもいたく感激したのだけど、

一方で、当時どういったルートをたどってこの駅にたどり着いたのか、

という記憶がさっぱりないのだった。

 

間違いなく今回同様に小牧線を南下してきたことになるが、

犬山から乗ったのか、はたまた途中から乗ったのか、

さっぱり覚えていない。

 

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で、実際に来てみれば何か思い出すかと思ったけれど、

何も思い出せなかった。

 

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上飯田、というよりは名古屋市北区にはかねてから訪ねてみたい神社があって、

そこを目指していたのだけど、

途中で「羊神社」なる看板を見つけ、立ち寄ってみた。

境内のあちらこちらに「羊」がいて、何ともほっこりしてくる。

 

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羊神社から北上して当初の目的である別小江(わけおえ)神社へ。

こちらは御朱印が人気とのことで、

この日も大勢の参拝客で賑わっていた。

ま、我が家で御朱印を集めているのは相方なので今回は下見(笑)。

 

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別小江神社から銭湯を目指して南下。

道中にあった団地の建物があまりにカッコよくてついつい見入ってしまう。

 

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今回お邪魔した銭湯は長喜温泉さん。

ビルの1階がコインランドリー、2階に銭湯、3階にはカラオケ喫茶があるそうな。

 

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脱衣場に入ると、爺さんというよりは、

年齢のわりにガタイがいいおっちゃんたちが

何か口論しているように見えた、というか聞こえたので、

僕は若干びびりつつおっちゃんたちに背を向けて服を脱いだのだけど、

浴室に入ろうとしたらおっちゃんたちはケラケラと笑っていた。

富山のおっちゃんたちの会話ならわりと聞き取れる自身もあるが、

名古屋のおっちゃんたちの会話は未だよく分からない。

 

目をひいたのは洗い場の一部の椅子が「つくりつけ」になっていることか。

僕が最近よく行っているスーパー銭湯でも見かけるが、

他の地域ではあまり見たことがないように思う。

浴槽はラドン、打たせ、電気、超音波といろいろあって、

おっとなったのが「高温風呂」。

 

愛知に来てからまだそれほど多くの風呂に行っている訳ではないので、

あくまで今まで行った中では、という話であるが、

北陸の風呂と比べると「それほど熱くない」と印象があったのだけど、

ここの高温風呂はガッツリ熱くて

温度計を見たら44度近くあった。

 

でも、この熱さが何とも心地よい。

で、隣の水風呂が恐ろしく冷たい。

けど、この冷たさが何とも心地よい。

こちらの温度計を見ると12度とある。

 

僕はお子様なので入れないけど、

ここのサウナは超絶に熱いことで人気があるそうな。

サウナから出てきたおっちゃんたちは苦悶の表情を浮かべ、

水風呂でその表情が緩み、

再び気合を入れ直し、サウナ室へと入っていく。

 

高温風呂と水風呂行き来してたらいつしか身体も気分もスッキリ。

いやはや、やはり銭湯はサイコーだわ。

 

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上飯田でもう1カ所寄ってみたかったところがある。

それが駅の近くにある「畑中ボクシングジム」。

以前の記事でも少し触れたが、

中部地方出身者で初のボクシング世界王者となった畑中清詞さんが、

引退後に設立したジムだ。

 

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このジムを舞台にしたノンフィクションが

平山譲さんの「魂の箱」という作品で、

僕がこれまで読んできた本の中でも1、2を争う「好きな」作品で、

通勤途中、電車の中で読んでて涙が止まらなくなって

めちゃくちゃ焦ったことを覚えている(笑)

 

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「魂の箱」文庫版の裏表紙には以下のように記されている。

元世界王者・畑中清詞。だが引退後、彼に残されたのは視覚障害だけだった。清掃の仕事に就きながら世界王者を育てるために再び立ち上がる畑中。そんな彼の元に集まったのは、親友を死なせた過去をもつ不良少年、自分の価値を見出せない高校生、ボクシング歴四十年の老トレーナーだった。たった四人の傷だらけの挑戦を描いた感涙ノンフィクション。 

 

この作品は1992(平成4)年に畑中さんがボクシングを引退して、

その3年後にジムを開き

1999(平成11)年11月23日の東洋太平洋フライ級タイトルマッチに教え子である

中野博選手が挑戦するシーンまでを描いているのだけど

冷静に考えれば当時の上飯田は線路がつながっていなかった時期の話なんだなあ、

ということに気づく。

 

高校3年生の夏休みに、飛騨古川から出てきたという元日本王者の杉田竜平さんは、

どうやってこのジムにたどり着いたのだろうか、

などとあれこれ考えるのもまた楽しい。

 

この日はジムが休みだったようで、

周囲は静まりかえっていたけれど、

好きな作品の舞台を訪ねることができて満足度は高い。

 

せっかく今は愛知にいるのだし、

これからはボクシングの試合も多く開催されるであろうし、

名も知られていないボクサーの闘いも見に行きたいな、と思う。

 

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上飯田駅に戻ると、

「やきとりの秋吉」があった。

言わずもがな、僕の大好きなお店である。

調べてみると、愛知県には鶴舞今池、そしてここ上飯田の3軒のみらしい。

 

開店まで待って、生ビールをキュッとやって、

きゅうり、ねぎま、しろ、若どりとかつまみたいなあ、と思う。

 

だが、僕以上に「秋吉行きたい」と呪文のように言い続けているのは

相方であった。

最近は敦賀あたりなら近いよね、なんて言っている。

 

黙っていればいいだけの話であるが、

つい口を滑らせて「秋吉はうまかった」なんて言おうものなら

今後の生活にいろいろ支障をきたすことになりそうだった。

 

次回は相方と一緒に来よう、

そう言い聞かせて僕は上飯田駅から電車に乗り込んだ。

 

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