最近、名古屋の栄に出る時には地下鉄ではなく、
上小田井駅から市バスを利用することが多くなった。
日中は1時間に1本程度と本数があるとは言い難いけれど、
「いつでも乗れる」地下鉄より、
「○分のバスに乗ろう」と時間を区切って行動できるもので、
田舎者の自分には性にあっているような気がする。
何より、地下鉄と違って景色を楽しめるのがいい。
で、このバスに乗っていると、
市役所付近で奇妙な光景を目にすることになる。
自分が乗っているバスは普通に道路一番左寄りの車線を走り、
路肩に設置されたバス停に停車するのだけど、
まるで路面電車のように道路の真ん中を走っているバスがあり、
立派な停留所も設けられているのだ。
「はて、あれは何だ」と思い調べてみると
「基幹バス」という名古屋独自のシステムで運行されているバスらしい。
そんなものでかねてから乗ってみたい、とは思っていた。
道路の真ん中を走るバスは萱場に到着した。
基幹バスについては後で触れることにして、
まずは昼飯にしたい。
通りを南下していくと、学校らしき立派な建物があり、
「愛知工業大学名電高等学校」と記されていた。
いわずと知れた野球の強豪校、
あのイチローさんの出身校ではないか。
僕はそんなに野球が詳しいわけでもないけれど、
イチローさんと同世代で、彼の活躍をリアルタイムで見ることができたのは
シアワセだったなあ、と思う。
とはいえ、イチローさんと同世代だなあと感じるのは、
似たようなタイミングで白髪が目立ちだしたこと、くらいだけど。。。
愛工大名電高の近くに目指す食堂があった。
いろんな意味で有名な食堂で、
営業中とは思えぬ佇まいであるが、
ちょうど中年のスーツ姿の男性が「ごちそうさま」と言って出てきたので、
入れ違いで入店。
店内は薄暗く、食堂というよりはむしろ昔からある喫茶店といった印象。
テーブル席では黙々と男たちがカレーを食べている。
メニューを眺めればカレー350円、ハヤシライス350円、カツカレーでも450円と、
べらぼうに安い。
カツカレーを注文するとそれほど時間をおかずに運ばれてきた。
ただでさえ安いのにサラダまでついている。
で、このカレーがべらぼうにうまい。
ただただうまい。
余計なことは言わぬ、ただただうまい。
5分もかからずに完食。
ごちそうさまでした。
このあたりに来たのは初めてなので、
しばし徘徊。
ゆるやかな坂道を上がっていくと、
不思議な形をした塔が見えた。
調べてみると「東山給水塔」というもので、
年に何度か一般開放もされているそうだ。
歩道橋を渡った先に「水の歴史資料館」なる施設があった。
入館は無料で、名古屋市の上下水道についての資料が数多く展示されていた。
僕自身、水の確保が困難な山小屋出身なもので
蛇口をひねれば「あたりまえ」のように水が出るってことを
未だに「ありがたいなあ」と思ってるけど、
こういった施設をみれば日常における「あたりまえ」は、
先人から今に至る多くの人の努力の積み重ねに過ぎないんだよなあ、
ってことを痛感した。
さて、改めて基幹バスをみてみる。
かねてから「名古屋には走り辛い道路がある」と耳にしていたが、
なるほどこれのことかと思うのは、
右折車線の右隣に直進の基幹バスレーンがあり、
さらにそこを一般車も走行していることであろう。
(ただ、この交差点より東寄りの交差点では、
直進の基幹バスレーンの右隣に右折車線が設けられていた)
せっかくなのでもう少し基幹バスに乗ってみようと谷口停留所へ。
道路中央部に設けられた停留所に行くには、
信号のある横断歩道を利用することになるが、
当然のことながら目の前にバスが止まっていても、
横断歩道の信号が赤である限り乗車することはできない。
で、この時も信号を待っている間にバスが出発していった。
基幹バスレーンには名古屋市営バスと名鉄、2社のバスが走っている。
定期券などで一部区間共通利用できるらしいが、
僕が所持している名古屋市のフリーきっぷでは名鉄バスでは使えない。
この日、何本か見ていると、名鉄バスの運転手はドアを開けると
「名鉄です」とマイク案内をしているような印象があった。
で、次にやってきたのが名鉄だったので、
僕はこのバスを見送ったのである。
しかしながら次がなかなか来ない。
時刻表を見れば、市営バスは1時間あたり約6本、
名鉄バスもまた5〜6本あたり運行されているので
かなりの高頻度といえるのだけど、
なぜかバスは現れない。
名鉄のバスが出ていってから15分くらいたって、
ようやく市営バスがやってきた。
「道路状況により、15分ほど遅れて運行しております。ご迷惑をおかけしております」
と運転手が何度も放送をかけている。
何があったのは分からぬが、
きちんとしたレーンが設けられていても定時運行は難しいということであろうか。
引山まで行って栄行きのバスに乗った。
前から眺めていると、
路面電車の線路なら道路中央をまっすぐ伸びているが、
基幹バスの場合、停留所の手前で右に一車線分膨らんで停留所のスペースを確保、
その先の交差点内で左に寄って元の直線上まで進み、
さらにその先に反対方向の停留所が設けられている。
そんなもので案外「蛇行」している印象がある。
そしてこの「膨らみ」が、広い交差点なら何ら問題なけれど、
狭い交差点だとカーブが急にならざるを得ず、
バス同士の離合もなかなか神経を使いそうな気がした。
また、停留所がその構造上、どうしても
「中央分離帯」にみえてしまうので、
不慣れな一般ドライバーからみれば「逆走?」となり、
戸惑いを生む要因になっているような気もする。
何も知らずに南北の通りから右折侵入すれば
「ひえーっ」と自分なら声を上げただろうな、とも思う。
とはいえ、この基幹バスにしろ、ゆとりーとラインにしろ、リニモにしろ、
名古屋は乗り物好きな人間にとって興味が尽きない街だなあ、
なんてことをつくづく感じた次第。
市バスで四軒家まで行けば地下鉄東山線の藤が丘も案外近そうだし
近々フリーきっぷを利用してぐるり一周的なこともやってみたい。
さて、風呂に入って帰るべと古出来町で下車。
通りを南へ下った左手の住宅街に銭湯「松の湯」はあった。
ちょこちょこ銭湯めぐりをしていて、
開湯直後は一番風呂を目指す客で混雑するが、
その後いったん静かになるのではなかろうか、
そんな気がしてたから開湯してから1時間後くらいを狙っていったけど、
脱衣場には思った以上に親父さんたちの姿があった。
しかしながら浴室内には3人ほどで、
どことなくのんびりした空気が漂っている。
浴槽は正方形に近く、円の字のように区切られていて、
白湯、電気、バイブラとある。
奥にミストサウナらしきものがあり、
どことなく南国っぽい絵が描かれていた。
湯はそれほど熱くもなく、
これはゆっくり入れるなあ、なんて思っていたけど、
どういう訳かめちゃくちゃ温もって、額から一気に汗が吹き出してくる。
ちょっと強面な感じのするがたいのいいおじさんが、
鏡を磨いている。
(素っ裸であるから当然客であろう)
一枚磨き終えると、隣にうつってまた磨いている。
そこまで磨くのだろうかとしばし眺めていたけれど、
僕の方がのぼせてきた。
スッキリした気分で古出来町の停留所に戻り、
再び基幹バスに乗った。
調べてみると、市役所で上小田井駅を経由する平田住宅行きのバスに乗れそうだ。
しかし、基幹バス・栄方面の市役所の停留所は
一般路線のバス停留所からは思いの外離れていた。
向かうには横断歩道をふたつ渡る必要がある。
で、こんな時に限って信号というのはなかなか変わってくれない。
結局、僕がバス停に到達する直前に平田住宅行きのバスは出発していった。
やむを得ず、僕は地下鉄を乗り継いで帰路についた。