阪神・阪急が出している「いい古都チケット・秋期」の販売が12月24日で終わるもので、最初は京都に行くつもりだった。
京都市内の地下鉄や市営バス、京都バス、かつ阪神・阪急の全線が乗り放題で1700円。
三宮から利用すれば格安だし、
鉄道だけでは行きづらい場所にある食堂や銭湯も行きやすい。
そんなときだった。
酒を飲みつつ、わりと出来上がった状態で登山系のYouTube動画を見ていたら、
奈良の若草山が紹介されていた。
「へえ、若草山って登れるんだ」と思い、
なかなかいい景色ではないか、とも思い、
調べてみたら12月第2日曜日で閉山と知り、
明日は12月第2土曜日ではないか、と思い、
ほな行ってみようと考えた次第。
関西私鉄各社は前述のいい古都チケットのような様々なフリーきっぷを発売しており、
奈良方面にも「奈良・斑鳩1dayチケット」なるきっぷが存在する。
最安値は阪神版の2000円で、
山陽の明石以東発が2700円、
神戸市営地下鉄沿線発が2600円などいろいろある。
往復するだけで元がとれるし、フリーきっぷならではの気楽さもある。
しかしながらこのきっぷ、よくよく利用範囲を見てみると、
すなわち若草山に登った後に京都往復ができる!!
さらにこのきっぷには阪急全線が利用できる「阪急版」があり、2350円である。
ということは近鉄の京都駅から阪急の烏丸まで歩くけばぐるりと周遊できることになる。
元々京都に行くつもりだったわけだし、
これは非常に魅力的な選択であるように思えてきた。
阪急・神戸三宮駅の窓口で「奈良・斑鳩1dayチケット」を購入。
神戸から奈良へは「阪神なんば線」経由が日常的になりつつあるが、阪急版では利用不可。
そのかわりに大阪メトロ全線が乗り放題になる。
なんば線が開業するまでは難波に行くにはこういったルートだったよなあ、
と少しばかり懐かしい気分に。
難波からは学生で混雑する快速急行で奈良を目指す。
学生さんたちは学園前で大半が下車してゆき、
新大宮でも多くの客が下車して、
空席も目立つ状態で近鉄奈良に到着。
すぐ隣には「ビスタカー」が止まっていた。
近鉄は魅力的な特急車両を続々と出してくるけれど、
僕がイメージする近鉄特急というのはいくつになっても「ビスタカー」であったりする。
「奈良・斑鳩1dayチケット」は奈良市内のバスも利用可とのことで、
路線バスで奈良公園を目指した。
僕が乗った奈良交通のバスは「後ろ乗り・前降り・後払い」だったけど、
「前乗り・前払い・後ろ降り」も存在しているらしい。
朝から多くの外国人観光客で賑わっていた春日大社を参拝して、
いざ、若草山へ。
上の写真は後から撮ったものであるが、
僕がイメージする若草山というのは、
「奈良公園の一画にある、鹿がいる小高い丘」であった。
要するにこの写真で見えている一番高い部分が山頂だと思っていた。
150円を支払い若草山に入山。
階段に一瞬躊躇したが、「まあ、そこまでだし」と上り始める。
ところが僕が山頂だと思いこんでいた場所は山頂でも何でもなく、
さらに奥へずーっと続いていた。
この日は12月というのに暖かく、汗がにじみ出てきて上着を脱ぐ。
思いもよらない「ガチ登山」となり、
ひーこらいいつつ無事に登頂。
天気サイコー、眺めもよし。
これは来てよかった、春に開山したらぜひまた来よう、と
満足して下山。
さて、帰路であるが、僕は東大寺の大仏殿前からバスに乗った。
このバスは「前乗り・前払い・後ろ降り」であった。
「奈良・斑鳩1dayチケット」は運転手に提示するだけでいいのだけど、
来るときと同じ方式だと思いこんでいたものでちょっと焦ってしまう。
車内は混雑しており、僕は立ったまま前を眺めていた。
歩いている観光客も多けりゃ車も多い、
さらに鹿まで多い、
奈良交通の運転手さんは大変だなあと思う。
そして近鉄奈良駅で下車。
この後は京都に出て昼飯食べて、銭湯でも入って帰宅、の予定である。
そんなもので自動改札に「奈良・斑鳩1dayチケット」を投入しようと思ったら、
そのチケットが見当たらない。
僕は動揺し、すべてのポケットをまさぐり、
ザックのポケットまでくまなく探した。
しかしながら見当たらない。
バス停まで戻ってみた。
しかし見当たらない。
何てことだ、せっかく安いきっぷを買ったのに、
いったい何をやっているのかと絶望的な気分になる。
しかしながら、待てよ、と思う。
僕はさっきバスに乗車した時点で運転手にチケットを提示している。
すなわちその時点ではチケットはあった、ということだ。
乗車時に見せることに慌てて財布から取り出し、
しまう過程でバス車内に落とした可能性は十分に考えられる。
乗ってきたバスの系統番号と近鉄奈良駅への到着時刻、
チケットを紛失した旨を伝えた。
「調べてみますんで後で連絡します」との返事があり、
10分後、「ありました」と電話がある。
「そのバスは奈良市内をぐるぐる回ってるんで、もうしばらく待ってもらったら来ます。車番は○○で、運転手にも伝えてますし」
奈良交通さん、ご迷惑をおかけしました、ありがとうございました。
京都へ無事移動。
烏丸側へと抜けて、
当初の目的であった食堂を目指した。
店内に入ると目の前にショーケースがあり、
稲荷や巻き寿司が載った小皿が並んでいる。
大好物のサバの押し寿司もあったので、
中華そばとあわせて注文。
酢飯の柔らかさ、味はもちろん、サバの〆具合まで何もかもが絶妙。
こりゃ美味いわ。
京都に来るとなぜか中華そばが食べたくなる。
その理由はわからない。
写真では分かりづらいけど、チャーシューがなかなかの存在感。
京都駅から歩いて来た甲斐がありました。
ごちそうさまでした。
さて最後は銭湯である。
位置的には食堂から真西の方角にあるが、
山陰本線沿いに京都の市場が広がっており、
まっすぐは進めないようだ。
そんな訳で国道9号線まで北上、西へ向かって西大路通を南下した。
それなりに歩いたが楽しみにしていた銭湯ということもあり、
期待がどんどん高まる。
ところが、である。
まさかまさかの臨時休業であった。
この時点でSNSをチェックしたらちゃんと休業する旨が記されてあった。
「・・・」
さて、どうするか。
この時点で13時40分。
京都の銭湯の多くは15時〜16時の開湯が多い。
大阪まで戻ってひとっ風呂にしてもいいかな、と考えた矢先、
西院駅の近くに13時開湯の銭湯があることを知った。
さっそく向かう。
お邪魔したのは電気温泉弥生湯さん。
外観は小綺麗な雑居ビル、という感じであるが、
中に入るとレトロな雰囲気が漂っている。
番台には愛想のいい高齢の男性が座っており、
奥には一昔前の「応接間」みたいな立派なソファが置かれた空間がある。
湯銭を支払い、はて、浴室はどこだと思ったら、
おっちゃんが階段から降りてきたもので、
「2階に浴室があるのか」と判断して階段を上がる。
すると男女別ののれんがかかっていた。
銭湯というより雑居ビルの事務所の入口にのれんがかかっている、
といった感じ。
男湯の扉を開くと、
大量の洗面用具が置かれていたが、
その多くにタオルが載っていた。
雑然とした雰囲気が社員寮の風呂場に迷い込んだような気分になってきた。
そんな中、
風呂から上がった、すっぽんぽんの爺さん2人があーだこーだと何か話している。
浴室内は仕切りが多く、全体が見渡せない。
とりあえず身体を洗い、手前にあった広めの浴槽に入ろうと思ったら水風呂で、
「ひえっ」と変な声が出てしまう。
主の浴槽は奥にあり、わりと深め。
適温で、「ふえー」と声が出る。
しばし水風呂との間を行き来する。
こりゃたまらん。
さっぱりした気分で湯から出て、
番台で缶ビールを買い求める。
立派なソファに座ってぐびりと飲んでいたら
店番のじいちゃん(番台とは別の方)が
「これ食べ」と魚肉ソーセージを出してくれた。
京都の銭湯は「若い人が多い」という印象だったけど、
こちらは店の方もお客さんも高齢者ばかりで、
それはそれでなかなか楽しい空間となっていた。
駅からも近いしまたお邪魔したい。
弥生湯さんからほんの少し歩けば
結局京都駅から西院駅まで回り道をしながら歩いてきた訳で、
フリーきっぷを持っているのに何をしているんだろうか、
なんてことも思ったけど、まあ、いいだろう。
僕は阪急京都線の電車に揺られて帰路についた。